うさ日記

憂さ晴らしに書くのかもしれません

精神的に向上心のないやつは馬鹿だ。

知らざるを知らずと為す、是知るなり、と大昔に孔子が言ったとか。

 

私のような未熟者がその意味を理解しきっているのかは疑問ですが、「自分には知っている限界が、世界には知らない事が果てなく広がっていて、それを弁えながら常に知ろうとする姿勢をこそ「知」と言う」という意味なのだと理解しています。

 

いわばその姿勢のない人間が「馬鹿」なのでしょう。まぁ、「こころ」の中でのこのセリフは、こんな字面通りの意味ではないと思いますが。

 

さて、ここまで書いておいてなんですが、今回の本題は「こころ」でも「孔子」でもありません。結局のところいつも通り、オタクによるオタクについての自戒的な文章です。

 

先日、「GODZILLA-星を喰う者-」を映画館で見て来ました。恐らくは大多数を占めるであろう、知らない人にこの作品がどんなものか説明いたしますと、特撮の看板とも言うべき「ゴジラ」ベースに、全編フルCGアニメーション、全3部作で綴られた全く新しい「ゴジラ」と言ったところでしょうか。

 

しかし、今回の本題はこの映画そのものではなく、その周囲についてです。私は基本的に作品について評判を調べる事はしません。視聴する前も、その後もです。これは社会と自分という個人を分けているからなのですが、そうは言ってもSNSを利用していれば自然と目にする事があります。

 

その中には多種多様、正負様々な意見があります。もちろん、それは当然の事です。平等ではなく自由を愛する現代一個人として、それは理解しています。

 

しかし、その中に引っかかる感想がありました。「俺たちが求めていたゴジラじゃない」と言うものです。ここで言う引っかかるとは、その意見が気に食わないとか、間違っているとかではありません。

 

その人の言わんとすることはこうです。「今回のアニメゴジラは、過去のゴジラ作品について詳しい人があまり関わっていない。それ故に、いわばお約束とも言うべきポイントを踏めていない。だから自分の求めていたゴジラではなかったし、つまらなかった」

 

なるほど確かに、その人の言うことは的外れではありません。今回の制作陣には、ゴジラを全く知らない観客の視点を取り入れるために、ゴジラ作品に詳しくない人が加わっていることは事実です。また、私自身も幼い頃からゴジラ作品を視聴しており、原水爆への風刺としてのゴジラも、シェーをして大衆ウケを狙うゴジラも、ハム太郎と同時上映するゴジラも知っています。その上で、確かに今回の作品は既存の「ゴジラらしさ」は薄く、或いは一見すると分かりにくくされていると感じました。

 

しかし、しかし「だからつまらない、期待外れだ」というのは実に悲しい感想だと思うのです。なぜならこれはデジタルリマスター版でも、リバイバル上映でもなく、新たなゴジラなのですから。違って当たり前、新しくて当然です。そこに以前と同じ共感を持ち込もうとすれば拒絶反応を起こすのは、むしろ自然とさえ言えるでしょう。

 

そして気づきました。結局のところ、この人は新しいものを受け入れる姿勢がないのだ、と。そして、それはあらゆる人に起こりうる停滞であり、諦観なのだ、と。

 

過去の作品に固執して、新たな作品という地平を開こうとしない事。それは正に精神的に向上心がないという事でしょう。それはある種の正解であり、楽な生き方です。自分の心を平らにして、新しいことを受け流す。そうしながら過去を振り返り、あの頃は良かったと思いを馳せる。それは、寧ろ現代社会では推奨される生き方でさえあるかもしれません。

 

そしてそれは老若男女問わず持ちうる性質です。知的好奇心の放棄は、人に停滞という安寧をもたらすと言えます。

 

ですが、私は、私自身にそうあれと願う事はありません。出来ないと言ってもいいでしょう。今現在の私にとってそれは堕落であり、怠惰であり、自殺です。断じて許容できないものです。

 

その一方で、安定を求める気持ちがわからないわけでもないのです。どんなに心がかくあれかしと願えども、体は勝手に年を取り、頭は「慣れ」という形で日々を脱色してしまいます。おお、記憶の中の幼稚園児の私の、世界のなんと色鮮やかな事か!常識という鎖に繋がれた今の私には、「ワンチャン食えるかも知れんな」と砂を口に含む、その好奇心は発露し得ない……!!このまま年を取り続ければ、さらにその傾向は自然と増していく事でしょう。

 

なーんて、絶望的な気持ちになっていたのですが。仮にそれが事実だとしても、出来うる限りの知的好奇心を奮い立たせ続ける事こそ、向上心と言うのでは?そこまで楽観できないものの、悲観する必要はないのでは?などと根が単純な私はすぐ立ち直ってしまいましたとさ、というお話でした。いつまでもオタクでいられますように、と他ならぬ自分に願った所で終わりにしたいと思います。

 

P.S 「GODZILLA-星を喰う者-」は現在絶賛上映中!また、第1部、第2部についてもNetflixで配信中です!大変面白く、テーマ性があり、それでいて前述の通り予備知識の必要が薄いため、是非今からでもご覧になってください!

 

それから、これを書くにあたり本棚を探した所、「こころ」が二冊見つかりました。ごめんよ高校同期の誰か。パクったっぽいわ。