うさ日記

憂さ晴らしに書くのかもしれません

腐黄も眠る潮満つ時

2021/11/09、ぽけーっとYouTubeを眺めているとオススメの奴がアイドルマスター ミリオンライブ シアターデイズの生配信アーカイブを出してきた。

このオススメというやつは意外と侮れず、過去には全く知らないが好みドンピシャのコンテンツをおすすめしてきたこともある大したやつである。どんなアルゴリズムで動いているかは知らないが、耳を傾けるに値するアドバイザーなのだ。

というわけで件の動画を見てみることにした。ちなみにアイドルマスター ミリオンライブ シアターデイズ、通称ミリシタについてはあんまり詳しくない。AS(オールスターズ)と呼ばれる13人を除くと、一通りキャラの名前と個性と見た目は分かるという程度だ。まさにミリしら。

 

というわけで動画を再生する。

おっ!たかはし智秋さんが出てるじゃん!上田麗奈さんも出てるじゃん!もう1人は……すまん!分からん!たかはし智秋さん演じる三浦あずささんはASの一員であり、もうなんか彼女について話し出すとそのまま数時間喋っちゃいそうなので要約すると大変好きな役者さんかつキャラクターである。上田麗奈さんは今年公開されめちゃくちゃヒットした閃光のハサウェイにてヒロイン「ギギ」の役を演じている声優さんで、同作のインタビューでとても丁寧な役作りをなさっている事を知って以来何かと気になる役者さんだ。もうなんかこの時点でやるじゃないかオススメくんという気分になってくる。

 

配信はなんやかんやわちゃわちゃやりながら進んでいき、ミリシタの次のアップデートの話題になった。どうやらこれが今回の目玉らしく、配信に出演している3人+もう1人が歌う楽曲らしい。「それではゲーム内のMVのVTRを、どうぞ!」と映像が流れ出す。曲名は「産声とクラブ」正直な話、自分はミリシタのようなリズムゲームが苦手なのでゲーム内の話にはあんまり興味がなかった。ぶっちゃけた話、上田麗奈さんがめちゃくちゃゲラでよく笑う事の方が重要だった。よく笑う人が好きなので。

 

だけどさぁ、マジで興味生まれなかったらこんなもん書かんわなぁ?

 

その時俺に電流走る。

薄暗いスタジオで4人のキャラクターが歌い踊る。暗さゆえに印象的な光源は4人のそばに鎮座する人の身の丈ほどもある立方体。コンテンポラリーダンスをモチーフとしていると紹介していた振り付けと、無機物的でありながらそれとは相反する生命の誕生を歌った歌詞。

全身を駆け巡り脳天で集合した電流が一つの答えを導き出す。「これ!海底火山火口の生態系の歌だ!」

 

何を言ってるんだお前はという方が大半だと思う。というわけで順を追って整理しよう。ちなみに、ここから終わりまでの内容は結構な文量がかかると思うが、自分の頭の中では一瞬の瞬きの内に生まれたものである。いやマジでビビッときたんですよ。

 

まず、この曲の背景を見ていこう。この曲は全52人の登場アイドルが一年四つのシーズンに分かれ、全国四地域を舞台にする企画の「ミリオンシアターシーズン」の北東地域担当「CLEVER CLOVER」の楽曲である。歌唱するアイドルは三浦あずさ高坂海美、ロコ、箱崎星梨花の4人。

三浦あずさはおっとりふんわりお姉さん。運命の人を探してアイドルをやっており、想像を絶するレベルの方向音痴でもある。かわいい。

高坂海美は運動大好き元気ガール。上田麗奈さんが演じており、よく笑うところが演者とそっくりである。かわいい。

ロコはアーティスティックなインスピレーションを求める芸術家気質な女の子。先程存じ上げなかった中村温姫さんが演じておられる。喋り方は可愛いルー大柴だが、芸術への情熱は本物。かわいい。

箱崎星梨花は純真無垢の擬人化。演じている声優さんが美人で有名で、なんか追っかけがいるらしい。キャラはもうなんかピュアさでこっちの身が持たない感じ。かわいい。

まぁ要するにみんなかわいいのである。ちなみにふざけて言っているのではない。アイドルゲームなんだからそりゃみんなかわいいやろがいと思うかもしれないが、かわいいとキレイは別の魅力だろう。そういう意味で言えば、キャラクターはかわいい系とキレイ系に二分されるといえる。そしてここにかわいい系が集まっているのはおそらく偶然ではないのだ。

 

かわいい。キレイ。ともに女性に使いうる褒め言葉だが、これらの持つ印象は違う。かわいいは暖かく、曲線的で、有機的でもある。その点キレイはクールビューティーという言葉もある通り、冷たく、直線的で、無機的と言えるだろう。そしてなによりキレイはCLEVERだ。別にかわいいはバカだと言っているわけではないが、うっかりさんやピュアさは温かみを持ったかわいい系に分類される特徴と言える。

 

そう。CLEVERはかわいいとは相反する概念なのである。ではこの楽曲はミスキャストなのだろうか?

 

否!断じて否だ!その根拠はタイトルや歌詞、演者の収録時の感想などから垣間見える。曰く「ロコの明るさを前面には出さないようにしつつ、でもロコらしく歌った」「無機質だけど生命が産声をあげるように歌う、というのが難しくて初めて収録中に泣いちゃった」らしい。ちなみに泣いちゃったのは上田麗奈さんだ。かわいいね。

じゃなくて!要するにディレクションの時から相反したものを相反したままお出しするのが製作陣の狙いというわけだ。だからこれでいいのである。

 

そして「暖かさ」「冷たさ」「生命の産声」「無機質」「暗い」「光源」それらの断片的記号が頭の中で一つの答えを紡ぎ出していく。そう!これは深海の海底火山のイメージだ!

 

私たち人間は暖かい地上に生きている。人間に限らず、大抵の生物は暖かく日の光の差す世界で生きている。これはつまり、太陽エネルギーで生きていると言える。どんな有機的生物も元を辿れば植物に行きつき、植物が光合成で太陽エネルギーを受け取っているのだから、それに連なる我々はみな太陽に連なる生物なのだ。そして、深海には日の光は届かない。ごく些細な日の光すら届かない水の底は冷たく、そして命も少ない。しかし、例外的な場所が存在する。それが熱水噴出孔である。ここには太陽の理屈では説明のつかない多様かつ多数の生態系が形成されている。そこに生きる微生物たちは噴出口から噴き出すミネラルや大抵の生物に有害な硫化水素、つまり無機物を利用して有機的なエネルギーを生み出している。そうやって、太陽から半ば独立した独自の産声をあげているのだ。

 

もうお分かりだろう。MVで描かれた光源は太陽ならざるエネルギー源たる熱水噴出孔であり、無機物の産声は相反するCLEVERすら飲み込んで歌い上げる1つのかわいいの解答なのだ。既存の枠に囚われない前衛的なコンテンポラリーダンスも、常識的なかわいいの鎖を引きちぎって歩み出す彼女らにピッタリである。

 

というようなことが脳内を駆け巡るのは一瞬だったのだが、もたもたしているうちにイベントが始まってしまった。妄想ではなく実際のところどんなイベントなのか?気になった方は是非ゲームをやってみて欲しい。