うさ日記

憂さ晴らしに書くのかもしれません

水星の軌道予測

ここから先は機動戦士ガンダム水星の魔女第一話「魔女と花嫁」までと及びその外伝小説「ゆりかごの星」のネタバレを含みます。

 

 

 

ついに始まった水星の魔女。毎週ワクワクが止まらないわけだが、それはそれとして今現在の展開予想みたいなものもついつい思い浮かんでしまうので書き残そうと思う。大丈夫、どうせこういうのは当たらないから、あとから読み返して「バカみてーなこと言ったらwww」と笑うために書くようなもんだから。

 

というわけで始めていこう。一話現在、ちょいちょいネットで言われている話がある。

 

本当にエリクト・サマヤ=スレッタ・マーキュリーなのか?

 

というやつである。今のところプロローグで出てきたエリクトとスレッタは同一人物であるかのように描写されている。声優さんも同じ人が演じているし、髪色や癖っ毛などの特徴も一致する。順当に考えれば、スレッタが偽名であり、幼少期の名前がエリクトである。

 

だが、明言されていない。そう考えるのが自然、というだけで明確な証拠はないのだ。本編時間はA.D.(アドステラ)122年であり、スレッタは16歳であり、プロローグ時のエリクトは4歳だが、プロローグが110年だとは言われていないのだ。

 

そこで持ち上がってきたのが「スレッタ、エリクトの娘説」である。今回はこれに付随してさまざまな妄想を垂れ流していこうと思う。

 

その大きな根拠として挙げられているのが、親世代の老け方だ。敵役として登場するデリング・レンブランを筆頭に、プロローグと本編の双方で既に登場しているキャラクターはスレッタ(エリクト)の他にも存在する。だがもしスレッタ=エリクトであり、プロローグと本編の時間差が12年だとするなら、彼らはあまりに老け過ぎている、というのだ。つまり、12年どころではなくもっと長く、それこそ丸一世代分ほどの時間が空いており、スレッタ=エリクトはミスリードだというのである。そこにゆりかごの星での「お母さん」描写を交えて、スレッタはエリクトの娘なのではないか?「お母さん」とはエルノラではなくエリクトなのではないか?という推測に至るわけだ。

 

確かにある程度の説得力を持つように見える。しかし、自分はこれの反対側にも同じく説得力のある反論があるように思われる。

まず第一に、ではエリクトの配偶者は誰なのか?という事である。いくら水星の魔女が百合アニメだからといっても、流石に単性生殖はできないだろう。それができたら「水星ってお堅いのね」評は180°掌返しせざるをえない。ということはエリクトの夫、スレッタの父に当たる人物がいるはずだ。

しかし、「ゆりかごの星」のエアリアル曰く、水星にはスレッタと同年代の子供はいない。また、水星の人々はことごとく老人扱いされている。つまり、結婚適齢期の男性はおそらく存在しないのではないか。無論男性機能は女性機能に比べ比較的長持ちするので老人の中に父親がいる可能性もなくはないし、すでに死別している可能性もあるが、だとしてもエアリアルからの言及がないのは不自然だろう。

 

第ニに、後継者問題である。親がデリングと同世代で年齢がスレッタと同年代のキャラクターは数人いる。ヒロインのミオリネ、性格の悪いコーラサワーことグエルとその弟ラウダ、中東の王子様的な外見のシャディクである。シャディクは養子なので年齢を気にしても仕方ないが、実子であることを明言されている他3人は老人の後継者にしては若すぎるのではないだろうか?スレッタがエリクトの娘なら、彼らにも親世代がいて然るべきなのでは?

 

だが、この反証にもまた反証が存在する。例えばグエルとラウダである。この2人は兄弟なのだが、同学年の異母兄弟な上に兄であるグエルの姓がジェタークなのに対し、ラウダのそれはニールという恐らく母方の姓を名乗っているのだ。また父親に近い価値観を持つとミオリネに評されたグエルが彼女をトロフィー扱いしていることから、父親は娘がいたとしても後継者に指名するつもりはないとも考えられる。ここから、「長らく後継者に恵まれない父親が手当たり次第に子を作り、偶然にも同じ年に念願の男児を手に入れた。しかし長男に会社を継がせるつもりなので姓はそちらにだけ与えた」という可能性が考えられる。ジェタークの企業は一族経営だと明言されているので、十分ありうるだろう。つまり、ミオリネはともかくジェターク兄弟は父親が単に老いてからようやく手に入れた男の子供であり、年齢差の反証にはなり得ないという事である。

 

と、このように限られた情報からはいろいろな推測が成り立つのである。そこでこれらの是非とは別にオリジナルの推測が湧き上がってきた。

 

「スレッタ(エリクト)とエルノラは普通の人間と歳の取り方が違うのではないだろうか?」

 

順を追って説明するために、まず離れた点から始める。その点とは、空白の12年間のエルノラの動向である。「ゆりかごの星」によれば、エルノラ(正確には「お母さん」)はスレッタと共に水星にやってきてから、彼女が大きくなるにつれ水星と地球圏を頻繁に往復していたとされている。また、スレッタが11歳の時には彼女らを嫌っていた筆頭である老人よりも「出世した」らしい。これは順当に考えれば、水星の資源採掘基地における組織構造内での出世であり、おそらくその本社のある地球圏との往復……ということになるだろう。だが、これも明言はされていない。

 

むしろこれはかなり疑わしいと言える。この水星基地はエルノラにとって不倶戴天の敵であろうデリングのベネリットグループの傘下企業の資産である。地球圏で迫害され水星に逃げてこざるを得なかったとして、さらにそこで人間が居住可能な場所がそこしかなかったとして、匿ってもらう対価に働く必要はあるだろう。しかし、出世をする必要があるだろうか?まして地球圏に出張に行くなどという危険を犯す理由などないだろう。むしろ隠れ潜むことを目指すなら、公的な身分は得ずにそっと隠れる方が自然なはずだ。

 

よってここではこのような推測が成り立つ。

 

「エルノラは水星を隠れ蓑にしつつ、地球圏の反ベネリットグループ組織のパイロットとして活動していた」

 

というものだ。つまり、出世とはベネリットグループの中の出世ではなく反ベネリット組織内の出世であり、わざわざ地球圏に行っていたのは戦うため……なのではないだろうか?

 

こう考えると一つ説明がつくことがある。「魔女」というワードである。ゆりかごの星のエアリアル曰く、「あっち(地球圏)じゃお母さんは魔女と呼ばれていて、世界中から疎まれている」らしい。しかし、プロローグ時点でGUND-ARMは呪いのモビルスーツだと言われているが、それを駆るエルノラについての言及はない。それどころか体制側はロールアウト済みのGUND-ARMは2機だと誤認しており、エルノラの特殊なルブリスは存在すら知られていなかった。もしここからエルノラが水星に逃げてからGUN…ガンダムで戦っていないとすれば、彼女が魔女として世間に認知される機会はない。ましてや世界中から疎まれることはないだろう。

 

しかし魔女扱いされているなら、それはやはり地球圏で世界中に知れ渡るような活動をしているということだろう。そして彼女はMSのパイロットである。最も自然なのは、パイロットとして名を馳せるような活動だろう。つまり戦いだ。

 

ではそこで劇的な戦果を上げているから魔女と忌み嫌われているのだろうか?もちろんその可能性はあるだろう。ある種の蔑称として魔女扱いするのは、特に戦果を上げられる側の人間にとっては自然な反応だ。だが、ここでもう一つの可能性を提示したい。つまり、戦果以外に彼女が魔女扱いされる特徴があるのではないかという可能性である。その根拠として本作のキャッチコピーは「その魔女は、ガンダムを駆る。」である。ガンダムを駆るから魔女なのではない。魔女が、ガンダムを駆るのである。つまり、魔女であることはガンダムに乗ることとは無関係なのではないだろうか?

 

とすると、魔女の所以とはなんだろうか?そこで始めに戻る。つまり、歳の取り方が違うというやつだ。これを解説するにはまた少し脱線する必要がある。

 

ガンダムの基礎技術となっているGUNDと呼ばれる人体と機械を接続する技術は、その権威であったカルド博士曰く、人類が宇宙に適応するために必要な技術であり、その主目的は軍事利用ではなく人類の未来のためだったらしい。ここで言う適応が何を指すのか示されてはいないが、どうやら人類全体が課題を抱えているらしい。その課題とはなんだろう。それをこう推測した。

 

「この世界の人類は宇宙に適応できず、老いが早く寿命が短い」

 

もしこうだとすれば3つ説明がつくことがある。1つはゆりかごの星にて水星に老人しかいないと描写されていることである。過酷な環境である水星に労働者以外の人間がそう多くいるとは考えにくい。つまり、老人が労働力として使われているのだろう。これは私たちが考える実年齢の老いと作中世界での老いに齟齬があるからなのではないだろうか?

 

次に説明がつくのは後継者問題である。先程はその見かけの年齢に反して後継者が若いことを問題としたが、もし老いが早いならこれは解決できる。見かけが年老いているだけで実年齢がさほどではないなら、急速な老いにも後継者の若さにも一挙に説明がつくのだ。

 

そして最後にエルノラである。彼女がGUNDを扱い、宇宙に適応した博士の言う人類の未来を体現する人物になっていたとすれば、彼女は我々と同じペースで__あるいはそれ以下のペースで__歳を取るのではないだろうか?そして、もし誰もが光陰矢のごとしと老いていく世界で、若々しく活動し続ける反体制女性活動家が居れば……それは「魔女」と呼ぶに相応しいのではないだろうか?

 

つまり「スレッタ(エリクト)とエルノラは普通の人間と歳の取り方が違うのではないだろうか?」というのは、普通の人間が早く老いていく世界で親子だけが我々と同じ感覚で年を重ねるということだ。

 

これには1つ強力かつ反則気味な根拠がある。それは水星の魔女が分割2クールで放送されることだ。前半13話とそれ以降の間に3か月の間を取ることが発表されている。このように途中で区切りをつけて放送する理由にはアニメ制作ペースの都合などもあるが、ありがちなものがもう一つある。それは作中時間が大きく進みキャラクターが成長することに感情を追いつかせるために、視聴者の側にも実時間のブランクを用意するという理由である。例えば13話でアスティカシア高等専門学校が崩壊し、後半で成長したキャラクターたちが自社やアーシアンやエルノラ達反ベネリットグループ組織を率いて戦争する……とか。そういった時間経過が描写されるとして、その時ミオリネなどの主要キャラが外見的に成長する中スレッタが変わらない姿で出てきたら……とっても面白そうではないか?つまり、この推測は分割2クールという方策と強烈に噛み合うのだ。

 

……というようなとりとめもない妄想が頭を巡っている。1話の時点でこんなに楽しいのだからこれはもうこれから先が楽しみで仕方がない。

 

でも多分ゆりかごの星で1番理解しておくべきことは、エアリアル的にモニタを2回瞬かせるのは「同意」を意味してるってことだと思いました。